『橘姓斑目家の歴史 古代・中世編』
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101第5章 橘諸兄、逸勢そして嘉智子皇后このまま帰るわけにはいかず、周囲をめぐりながら塀ごしに中の様子を探った。すると、怪しい男とでも思われたのか、隣家の庭から老夫が不審気な視線を向けている。「このお寺は、きょうは閉まっているんでしょうか」老夫に向けて発した言葉の口調で、怪しくはありませんよと伝えた。すると観光客とでも思ってくれたのか、こう教えてくれた。「お寺の人たちはいつもここに住んでいるわけじゃないからね」「庭を見たいのなら、あそこの裏戸が開くから、自由に入って大丈夫だよ」裏戸から庭に入ると、お目当ての五重塔と三重塔が白塀を背にして寄り添うように立っている。五重塔が諸兄の墓で、三重塔が正室の藤原多たびの比能の墓らしい。多比能は藤原氏の頂点に立つ不比等の娘で、母は県犬養橘三千代とか。諸兄は、三千代が不比等と再婚する

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