『橘姓斑目家の歴史 古代・中世編』
108/356
106の相手は格別だろうし、まして高津内親王は第一皇子、第一皇女の母だからね、あとから割り込んだところで二人の愛の語らいの、おこぼれにあずかるくらいがせいぜいだろうよ」「なにを言いたいの?」とうとう我慢しきれなくなって嘉智子は榻とうから腰をあげてしまった。立つと、上背があるだけに、胸高に着けた纐こうけち纈の裳もが、半身の曲線をすらりと際だたせて白檀の繊細な塔を見るようにけだかかった。「いまさら逸勢どのに哀れまれるまでもないわ。自分のことですもの、さんざん考えたあげくの結論ですよ」「おれは惜しいのさ」*嘉智子皇后の散策する姿が見えてきそうな大覚寺の名勝「大沢池」
元のページ