『橘姓斑目家の歴史 古代・中世編』
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143第7章 疑わしきは「家伝」の利益に言われてみると、それはそうかもしれない。この系図は、最末尾の記述から判断して、作成されたのが16世紀末と見られ、斑目四郎が生きていたのはその時点から500年も前のことになる。系図の作成時、「前九年合戦」といった古えの歴史に特段に関心がなければ、そんなご先祖様の名前など忘却の彼方というのは十分にありえることだろう。日本史の知識がそれなりに体系として整理され、大昔の「前九年合戦」という観念が頭の中に存在するのは、学校教育を経た現代人であるがゆえのことだろう。とはいえ、歴史学の立場からは、かなりの玉石混交の状態にある『白河斑目氏系図』を、斑目四郎を先祖に持つという一族の信頼できる系図と見るわけには、とてもいかない。冒頭部分の脚色の多さと、「直則」以下の人物の実在の有無が判断不能であることは、無視できない問題となる。どの学者・研究者も今を生きる子孫たちの思いに配慮してのことだろうが、遠慮気味に「歴史学としては分からないとしか言えない」と言っていた。それはその通りであろう。問題は、「はじめに」で言及したように、そんな歴史学の立
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