『橘姓斑目家の歴史 古代・中世編』
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34そして冒頭の、渋谷の道玄坂――。約束の午後2時に20分近い余裕を持ちながら、そのビルを目指して歩いていた。すると、約30メートル先の右側の中華料理店から一人の男性が出て来て、坂を上りはじめた。その年代にしては背が高く、スマートなスーツ姿。なぜか見覚えのある感じが漂っていて、不思議な気がした。顔は全然見えていないのだが、後姿の印象がまさにネットで見慣れた宝賀氏である。やむをえず、そのまま尾行するかのような位置関係となった。途中、小さな脇道が右方向に走っていて、乗用車が一台車道から左折し、男性の前を横切ってそこへ入ろうとしていた。男性は足をゆるやかに止め、左手をポケットに入れたまま右手を横に二回流して、先に通してやっていた。そして、再び歩き始めた。(きっと、右側に見えてきたあのビルに入っていくはずだ――)

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